2007-01-01から1年間の記事一覧
国家中枢にテレビカメラが入り込んだかのような臨場感に、思わず圧倒されそうになるが、ここに書いてあることは決して「事実」ではない。関係者へのインタビューや膨大な取材内容を元に創造された一つの「仮説」、もっと言えば”見てきたようなウソ”である。…
広告によって人為的に作られるブランド。薄い本だが内容は相当に濃い。
食事は母親の手料理、エアコン完備の個室からアルバイトに通い、ここではないどこかを探して生き続ける。日本にフリーターやニートが多いのは、比較的裕福な親と同居することが可能だからである。著者の視点は慧眼に値するが、全篇にあふれる若者擁護の甘っ…
百輭入門書としてこの本を選んだのは失敗だったのだろう。百輭自身をモデルにした男が、毎日ぶらぶらしながら酒を飲み、借金を重ねるだけの、取るに足らない身辺雑記の連続。ファンなら思わずニヤリとするたぐいの筆致なのだろうが、いかにも「軽妙洒脱でご…
ビョーキの人と密室に置かれ、彼女の奇怪な妄想を一晩中聞かされているような気分になる。純度100%の自意識で埋め尽くされた物語空間。読み手には、逃げ場が1ミリも用意されていない。読後の鉛のような疲労感は島尾敏雄に一脈通じるが、こちらには更に…
インターネットが登場する以前の本だけに、今現在どれほどの有用性があるかは疑問だが、ビジネス雑誌の”企画術特集”は、いまだにこの本と川喜田二郎「発想法」のバリエーションである。そういう意味では、アイデア開発上の基本的なヒントは網羅されていると…
簡単に理解できることが、簡単に身に付くわけではない。かくしてビジネス本とゴルフ雑誌は売れ続ける。
一つのフォーマットに情報のピースをハメこんでいけば、いとも簡単に企画書が出来上がるのだ、と。何事も効率重視の元官僚が書いただけに、一応の説得力はあるのだが、何か騙されているような気もする。役立つのは後半の30ページほど。それ以外は同じ話の…
40年以上前の名著を復刊。全篇、これ挑発。
専門領域を扱っていながら、広く一般に応用できうる知見を多く有している。名著と呼ばれる所以だろう。
ジャスティンて、こんなに歌が下手だったの?ホワイトノイズの壁の向こうに一瞬、彼岸が見えそうになるのだが、音痴なボーカルで現実に引き戻される。その繰り返し。さすがに似たような曲ばかりでこちらの受容レベルも次第にダレ気味。ライブではなくCDで…
「ノーベル賞評価への再審請求」という刺激的なフレーズ。狂牛病の病原体はタンパク質そのものである、というプリオン説に疑義を呈し、ノンフィクション的手法で真実を追求していく。良質なサスペンス。「生物と無生物のあいだ」に比べるとやや専門性が高い…
批評でも何でもない。東京芸大の学生たちが書いた「作文集」である。近所の建築物を散歩がてらに見物し、その印象を文学風に表現してみました、といった自意識過剰のイタい駄文が勢ぞろい。こんなものを建築コーナーに陳列する六本木TSUTAYAの良識を…
著者が世界で初めて開発した”味覚センサー”を用い、「味」の謎を科学する。「味覚は主観である」という視点や、味を数値化して保存する「食譜」のアイデアなど知的刺激に満ちたトピックを満載。「生物と無生物のあいだ」より圧倒的にユニークなサイエンス本…
本書の成功は、その多くを文体に負っている。海外の科学エッセーを翻訳したかのような、古典的で詩情たっぷりの語り口。もったいぶって話がなかなか前に進まず、正直辟易するのだが、この独特の文学性が、分子生物学という専門領域であるにも関わらず一般読…
非常に完成度の高い、PR会社のPR本。この本を読んで「世の中を動かしているのは実はPR会社だったのだ」「現代の企業経営はPR会社なくしては語れないのだ」という錯覚に陥る人は多いと思う。「このPR会社に相談してみようか」という気にさせる誘導…
バズワードを振り撒き、「新時代の到来」を喧伝する。要はアメリカの業界団体の動向をチェックして「日本もこれからはこうなる!」と煽り立てるおなじみのパターン。 マスが効かなくなり、広告コミュニケーションの主役がネットに移動。ホームページという自…
永遠の青春小説、と評されるこの作品。読後感は相当「奇怪」である。 一応、現代の高校を舞台にしているようだが、ここには「ケータイ」も「イジメ」も「売り」も出てこない。登場人物たちは決して汚い言葉を使わず、信じがたいほど品行方正な会話をやり取り…
現場レベルの卑近な内容であるにも関わらず、企画術とマーケティングの本質を突いているところが凄い。「企画のネタは街に」「体温のあるマーケティング」「おじさん殺し」・・・いちいち納得。構成・執筆にクレジットされている「ロイ渡辺」は構成作家なの…
「ユーザーはモノではなく《価値》を買っている」という理論を、平易な解説とドラマ仕立てのストーリーで分かりやすく説明した良書。新人OLが閉店寸前のイタリアンレストランを立て直す、というドラマ篇はコミックの原作のようなやや安直なシナリオではあ…
巨匠と呼ばれる5人のランドスケープ・アーキテクツへのインタビュー集。大半はすでに老境に差し掛かっており、人間的な奥行きと深い思想性に裏打ちされた円熟味のある発言が楽しめる。惜しむべきはあまりにも生硬な訳。誤訳も相当含まれている気がする。図…
薄い本だが、マーケティングの基本的なポイントを簡潔にまとめている。豊富なケーススタディがうれしい。
学級文庫には必ず入っていそうな小説だが、子どもたちにはあまりウケないような気がする。なんとなく、クラスで一番作文のうまいやつが書いたような内容というか。要するに作り手の自意識が過剰に前に出ているのだ。「現代の童話」のような顔つきをしている…
ファッションビジネスに精通した著者ならではの、業界裏話がたっぷりと楽しめる本書。ライセンス生産の実態を暴露した部分が特に面白い。気軽に読めるエッセイだが、ブランド品が日本で流行る理由を「清潔」と「安全」と指摘するなど、なかなか鋭いマーケテ…
それほど実験的な音楽ではなく、ごく普通にロックしていた。オモチャ箱をひっくり返したような、もっとトリッキーな音を想像していたが、これはこれで素朴で良い。Kieran Hebdenの誠実で繊細な人間性がそのまま音に出ていたと思う。客も静かに鑑賞する感じ。…
アムネスティ日本支部が主催した「世界人権宣言」の新・日本語訳コンテスト。その受賞作と選考過程を収録したのが本書だ。 最優秀作に驚かされる。「超々訳」と銘打たれたそれは、各文が英語の原文とまったく対応していない。世界人権宣言をネタに、諧謔に満…
さらさらと読めて、なるほどと膝を打ち、本質を掴んだ気になるが、しばらくするとそれが単なる錯覚だったことに気づく。ゴルフの教則本と同じパターン。巷に溢れる「〜メソッド」なるものは、結果の逆算でしかないわけで、職人芸が凡人に真似できるわけがな…
「マーケティングの神話」から逆行した印象。ブランドを図示した三角ピラミッドなど、凡百のマーケティング論のフォーマットに戻ってしまった。切り口にも鮮度がない。「神話」があまりにもラディカルな主張だったため、揺り戻しがきたということか。あとが…
EPに受けた衝撃は測り知れないものだった。ミニマルだが鋭角的で攻撃的なサウンド。一点に合わせるための鬼気迫るようなテンション。そのストイシズムは、初期54−71を想起させた。そうこうするうち、フルアルバムが出た。大いに失望した。ボーカルが入…
タイトルと背表紙のあらすじだけ見ると、理想教育を語った象徴性の高い物語かと思う。実際、中盤まではそのように進む。敗戦国の小学校に赴任してきた戦勝国の若き女性教師が、全体主義的な教育を施されてきた生徒たちに、自由の素晴らしさを伝えていく。始…