尾崎翠集成(上)(中野翠編/ちくま文庫)

erevan2007-12-15

ビョーキの人と密室に置かれ、彼女の奇怪な妄想を一晩中聞かされているような気分になる。純度100%の自意識で埋め尽くされた物語空間。読み手には、逃げ場が1ミリも用意されていない。読後の鉛のような疲労感は島尾敏雄に一脈通じるが、こちらには更に胸のむかつき、嘔吐感も加わる。