2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

企画書は1行(野地秩嘉/光文社新書)

タイトルに偽りあり。たった1行の言葉がプロジェクト全体を動した、というような「はじめに1行ありき」の本ではない。いくつかの事例から「気になる一言」をピックアップしただけ。サギ的商法。

長谷川恒男 虚空の登攀者(佐瀬稔/中公文庫)

元新聞記者という割には文体にクセがあり、不用意な体言止めや美文調がうるさい。インタビュー部分のリアリティが薄く、まるでシナリオを読まされているよう。「ベビーブーマー800万人の中の一人」という世代論もしつこい。それでも後半には筆致が乗って…

地図が読めればもう迷わない(村越真/岩波アクティブ新書)

「技術書というより世界の見取り図」という解説者の言葉がこの本の性格をうまく言い当てている。惜しむべきはタイトル。「ナビゲーションの技術」とでもすれば趣旨も明快になったのだが。

アメリカの日本改造計画(関岡英之他/イースト・プレス)

「親米保守」から「親日保守」へ。その視点か。なぜ気づかなかったのだろう。汝の敵を知れ。

巨怪伝(下)(佐野眞一/文春文庫)

ついに読了。読み終えるのが惜しかった。正力を取り巻く人物たちが、お互いそれとは知らず様々な場面で相関している事実に、人智を超えた何者かの存在を感じずにはいられない。「正力を中心とした惑星配列」は名フレーズ。巻末30ページに及ぶ膨大な参考資…

本気で作家になりたければ漱石に学べ!(渡部直己/太田出版)

夏目漱石の全作品を通読してみて驚くのは、一作ごとにその表現スタイルを変えていること。一般的なイメージとは違って、かなり実験的な作家だったのだ。作家志望者に向けたこの本は、漱石の多彩なテクニックから主要なものを抜粋、その奥義を詳しく解説しな…

プーでもなれる映画監督(渡辺一志/G.B.)

「19」「キャプテントキオ」を監督した著者の、映画づくりに賭ける思いが凝縮された一冊。他人の金で映画を撮らせてもらいながら、あくまで自分の企画を守り通そうとする姿はなんとも青臭いが、独特の人間的魅力のせいでそれも許せてしまう。映画が大好き…

言語 07/3月号(大修館書店)

言語学の専門雑誌。一般読者にも親しみやすい編集内容に好感。三森ゆりか氏の「物語の構造論」がなかなか面白い。「勘違いことばの辞典」「ことばの認知科学事典」など、大修館、東京堂の個性的な辞典類の広告も楽しめる。

巨怪伝(上)(佐野眞一/文春文庫)

驚愕。戦前から戦後へ至る日本の激動期を舞台に権力の限りを尽くした妖怪の一大記。ナベツネごときはもはや卑小な存在ですらある。圧倒的な取材力と緻密な筆致。正力とその時代をすべて飲み込んだ怪書。

鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」(勝見明/プレジデント社)

鈴木語録を軸にセブンイレブンの強さを検証。「『顧客のために』と『顧客の立場で』は大きく異なる」など目からウロコの発言が随所に。逆説的な発言も大胆なアプローチも、すべて鈴木のデータ至上主義がもたらした結論。個人のカリスマ性に拠らない、現代的…

広告会社は変われるか(藤原治/ダイヤモンド社)

インターネットの隆盛により、ビジネスモデルが大きく揺らぐ広告界。電通総研のトップ自らが筆を取り危機感を訴える。いくつか思い切った内部事情の開示もあるにはあるが、全体的にはごく当たり前の現状認識。変化に着いていけない役員クラスには丁度いいの…

仕掛け、壊し、奪い去る アメリカの論理(原田武夫/ブックマン社)

「年次改革要望書」「奥の院」「パブリックディプロマシー」等々、アメリカの日本支配にまつわるキワどい話題を網羅して期待させるが、論旨はかなりいい加減。列挙したキーワードの間を、思いつきと思い込みで埋めていく。ハイレベルな床屋政談というところ…