希望格差社会(山田昌弘/ちくま文庫)

erevan2007-12-21

食事は母親の手料理、エアコン完備の個室からアルバイトに通い、ここではないどこかを探して生き続ける。日本にフリーターやニートが多いのは、比較的裕福な親と同居することが可能だからである。著者の視点は慧眼に値するが、全篇にあふれる若者擁護の甘ったるい言説には少々辟易する。
そもそも、世界的にもレアケースな、一億総中流時代を基準に置くから「格差、格差」と騒ぐわけで、あれは国民全体が宝くじに当たったようなもの、つかの間の幻だったと正しく認識することから始めねばならない。当時こそが理想的な社会だったとのたまう連中には、画一的で、出る杭は打たれる式の日本的教育が厳しく批判されていた事実を思い出してもらう必要がある。彼らとて子供たちそれぞれの個性を伸ばそう、という考えには賛成するだろうが、「世界に一つだけの花」が咲き乱れる場所、それはすなわち格差社会であることくらいは知っておくべきだろう。