2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

表徴の帝国(ロラン・バルト/ちくま学芸文庫)

文楽や生け花はまだしも、すき焼きや天ぷらまで詩的に讃えられると、もはやギャグとしか思えない。著者は、強烈な洒落を効かせただけではないのか?インテリの余興として。ご高閲をありがたく拝聴する日本人を、内心小馬鹿にして。芭蕉や蕪村の俳句を俎上に…

自己創出する生命(中村桂子/ちくま学芸文庫)

レゴブロックのワンピースを叩き壊し、砕け散った破片をさらに顕微鏡で調べるようなことを、恐らく生物学はやってきたのである。 物理的には可能だとしても、それ以上細分化しては意味がない、ギリギリの最小単位。 著者にしてみれば、「DNA」は”砕き過ぎ”と…

モノのために家賃を払うな!(あらかわ菜美/WAVE出版)

部屋が、モノで溢れている。そういう人は、家賃の大半を倉庫代として払っているのである。隙間があったら「収納できる!」と思ってしまう病理。広い部屋を広いまま使うという発想は、日本人にはことさらハードルが高い。「あると便利そうなモノは、もともと…

ピカソ 剽窃の論理(高階秀爾/ちくま学芸文庫)

ピカソについて、何も知らなかった事に衝撃を受けた。こんなやり方が許されるのか。他人の作品をまるごと模倣し、リミックスにリミックスを重ね、最終的にオリジナルとはまるで異なったイメージの「作品」を完成させる。タイトルは他人の作品のままである。…

太陽の塔(森見登美彦/新潮文庫)

自閉的な学生の、たわいもない妄想日記。中学生の作文に明治大正文学風のレトリックを施しただけ。 劇団ひとりの書いた物にそっくり。

IKEA超巨大小売業、成功の秘訣(リュティガー・ユングプルート、瀬野文教訳/日本経済新聞)

世界的大富豪となった創業者イングヴァル・カンプラード氏の出生から掘り起こし、いまだ謎めいた企業の内実を徹底して暴いた読み応えのあるノンフィクション。ビジネスモデルのみを比較検討するようなマーケティング読本がいかに空虚なものかということを教…

ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ(ドン・タブスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ、井口耕二訳/日経BP)

冒頭、カナダの金鉱会社ゴールドコープの逸話が衝撃的である。経営的に窮地に追い込まれた同社は、自社の持つすべての地質データをネット上に公開、懸賞金付きの鉱脈探しを実施する。これに応じた世界中の参加者によって数々の鉱脈が「発見」され、結果とし…

アメリカの鱒釣り(リチャード・ブローティガン、藤本和子訳/新潮文庫)

内容もさることながら、この訳文に村上春樹が多大な影響を受けたんだそうだ。なるほど。「芝生の復讐」で感じた謎が解けた。さてブローティガンのすべてが詰まっていると言われる本書。冒頭から妙にまだるっこしく、独りよがりな訳文が鼻につき、途中かなり…

創造者(J.L.ボルヘス、鼓直訳/岩波文庫)

詩文集。途中から読み飛ばしてしまった。どうもこの訳者は信用できないのだ。

闇に消えたダイヤモンド 自民党と財界の腐食をつくった「児玉資金の謎」(立石勝規/講談社α文庫)

戦後政治の闇に根を伸ばし、複雑に絡み合う奇怪な地下茎。その中枢である児玉資金の流れを追いながら、数々の事件の真相を暴いていく。何とも無骨な記者魂。久しぶりに取材物の醍醐味に酔う。オピニオン誌の相次ぐ廃刊。直接取材なしでもネットを漁れば本が…

「食料危機」をあおってはいけない(川島博之/文芸春秋)

立て続けに読んだ「陰謀論モノ」を解毒するには、このような良書が必要だ。事実に基づいた、説得力のある論理展開。読みやすく、分かりやすく、とにかく”まとも”なのである。例えば「バーチャルウォーター」の概念が、どうも眉唾っぽい・・・と感じているよ…