2010-01-01から1年間の記事一覧

 ブランド「メディア」のつくり方(嶋浩一郎編/誠文堂新光社)

出版/ネットメディアの編集者が語るコンテンツづくりのノウハウ。プレゼンスタイルになっているので、ロジカルかつライブ感があり面白い。「ブルータス」編集長・西田善太氏のパートが出色で、面白い雑誌は面白い人物によって作られるという揺るぎない事実…

 クロスイッチ(電通「クロスメディア開発プロジェクト」チーム/ダイヤモンド社)

ジャンプスクエア、カップヌードル「FREEDOM」、JT「ルーツ」など、事例はさすがにメジャー級。この手の本にありがちな言行不一致がなく、内容も平易で好感が持てる。とはいえクロスメディアなんて、セールスプロモーションが単にオシャレに言い換えられただ…

 フルカワヒデオスピークス!(古川日出男/アルテスパブリッシング)

作品は一冊も読んでいないが、名前だけは気になっていた古川日出男の対談集。坂本慎太郎、大竹伸朗などバラエティに富んだ対談相手の話はなかなか面白い。が、肝心の古川日出男はアウト。音楽や舞踏を過剰な文学的レトリックで解説しようとする姿。自作の文…

 <意識>とは何だろうか 脳の来歴、知覚の錯誤(下條信輔/講談社現代新書)

非常に面白いのだが、各トピックの情報密度が濃すぎて、途中でやや脱落。ハードカバーを読み切るくらいの体力が必要だ。再読コーナー入り。

 歴史は「べき乗則」で動く(マーク・ブキャナン、水谷淳訳/ハヤカワ文庫)

半信半疑で読み始め、半信半疑のまま読み終わるような本。複雑系やスモールネットワークのコンセプト自体にマジカルな吸引力はあるが、データで裏付けようとすればするほど怪しさが強まり、単なるこじつけに思えてくる。

 分類思考の世界 なぜヒトは万物を「種」に分けるのか(三中信宏/講談社現代新書)

福岡伸一と筆致が被るが、ひとり悦に入った衒学趣味に辟易。途中で早送り。分類思考自体もまったくもって無益な代物。

 プロフェッショナルアイディア。(小沢正光/インプレスジャパン)

広告界の大先輩による、この一点の曇りもない良質なアドバイスが、カビ臭い骨董品に思えてしまう時点で、広告の時代はとっくに終焉を迎えたことが分かる。

 全脳思考(神田昌典/ダイヤモンド社)

異色のアイデア開発手法「全脳思考」を紹介する、奇怪なマーケティング本。メソッドを要約すると、 1、その商品によって身近な人物が120%の笑顔になっている様をイメージする。 2、なぜ笑顔になっているのか、その理由を語る彼のセリフを考える。 3、…

「本当の自分」はどこにいる 自分探しの心理学(加藤諦三/PHP文庫)

学生向けに書かれた本だが、幅広い層に受け入れられる内容だと思う。最近まとめて読んだ一連の著作の中では最もバランスが良い。加藤心理学の入門編としてオススメ。

トリプルメディアマーケティング(横山隆治/インプレスジャパン)

次世代マーケティングの概略図として簡単で分かりやすく、結果的に強い。あとは各メディアのボリュームを勘違いせず組み合わせていくこと、オンライン上も結局マスメディアに頼らざるを得ないという認識、最後はクリエイティブが勝負というあたりを踏み違え…

ユーザーイリュージョン 意識という幻想(トール・ノーレットランダーシュ、柴田裕之/紀伊國屋書店)

正直、北欧の小国に過ぎないデンマークに、これほどの知性が存在している事に驚いた。脳科学、宇宙物理学、社会学、生物学、情報工学・・・カバーする範囲が尋常でなく学術的知見も膨大だが、それが読み物として一般にも非常に分かりやすく面白くなっている…

「大人になりきれない人」の心理(加藤諦三/PHP文庫)

これは本文のキーワードそのまま「5歳児の大人」というタイトルにすべきだったと思う。著者みずからの体験が赤裸々に綴られており、その境遇が自分のケースと酷似していることで、腹落ちする部分が非常に多かった。

「うつ」になりやすい人(加藤諦三/PHP新書)

ここまでくると自分との接点は見いだせないが、うつになった周囲の人間やその家庭環境を振り返ってみると、言い得ている部分が多い。

言いたいことが言えない人(加藤諦三/PHP新書)

思い当たるフシは30%くらいに低下。次第に自分に近しいある別の人物について書かれているような気がしてきて、そこに対する貴重な示唆を得る。

東京町工場(beretta P-08/雷鳥社)

日本の中小零細企業を50社ほど取材し、写真と簡単な文章で紹介したビジュアルブック。若手カメラマンが多数参加していることで、体裁はオーソドックスだが全体に瑞々しく、「滅びの美学」に傾くことをギリギリで回避している。それにしても日本の基幹産業…

手離す技術(桜井章一/講談社+α新書)

これはイマイチ。上から目線で世相に物申し、訓示を垂れはじめた途端に凡百の有識者か横町の雷親父になってしまう。麻雀領域に留まっていた方が良い。

サウンド・バイツ フランツ・フェルディナンドの世界グルメツアー(アレックス・カプラノス、実川元子/白水社)

グラスゴーのロックバンド、フランツ・フェルディナンドのボーカリストが書いたグルメ・エッセイ。「ザ・ガーディアン」に連載されていたというだけのことはある文学的才能。ちょっとヒネた目線やオフビートな感性は「ハイ・フィデリティ」とかジャン・フィ…

だれにでも「いい顔」をしてしまう人(加藤諦三/PHP新書)

的中率は80%に下がったが、相変わらず繰り返される胃のあたりの疼き。完膚なきまで破壊される事の快感。

ツキの正体(桜井章一/幻冬舎新書)

裏麻雀の世界で20年間無敗の伝説を持つ「雀鬼」の人生論。この短い書籍1冊にすべて含まれているから、書棚の類書は全部捨ててしまって良い。人間性を回復するための基本的な行動原理とは、最終的に「無意識の発動」という一点に行き着くようだ。

だれとも打ち解けられない人(加藤諦三/PHP新書)

万人向けではまったくないが、特定の人間にはピンポイントで突き刺さる。実際、読んでいる間、何度もみぞおちのあたりを掴まれるような感覚があった。書いてあることが100%的中していることに恐れ入った。抑圧された過去を容赦なくえぐり出す荒療治。あ…

疲れない体をつくる免疫力(安保徹/知的生きかた文庫)

交感神経と副交感神経の棲み分けが、いまいちよく分からない。取りあえず、シャワーでなく風呂に浸かること、玄米食にすること、軽い症状なら薬に頼らず放って置くこと 、あたりを実践してみるか。

ファイテンの謎(魔法の首輪研究会/角川書店)

ファイテンのPR本ではあるのだが、読み物として非常に面白くできている。読者の疑問をうまく先取りしながら、考えられる限りほぼすべての取材先に当たり、謎解きを進めて飽きさせない。企業と出版社が綿密に打ち合わせた上でゴーサインが出ているのだとして…

著作権の世紀(福井健策/集英社新書)

恥知らずな中国が日本のブランド名を勝手に商標登録し、第2、第3のgoogle booksが総取りを仕掛けてくる。著作権とは、守りではなく攻めのスタンスで考える時代なのだと思う。相変わらず硬直化し、ちまちまと調整型の議論に終始する日本の現況には冷や汗が…

マインド・タイム(ベンジャミン・リベット、下條信輔訳/岩波書店)

我々が「何かをしよう」と意識する0.5秒前に、すでに脳は起動し意思決定を済ませている???一見エセ科学としか思えないこの仮説は、完全無欠の科学実証主義によって導き出された「事実」なのだ。まるで禁断の書を開くような知的興奮。人に話さずにはいられ…

lateral thinking(edward de bono/penguin books)

図形パズル的思考法とでも言ったらいいか。ややもすると内容がクイズっぽく、実務に役立つかどうかは疑問だが、方法論としてはなかなか面白い。小難しい事をこれだけ平易な英文で語れることに一番感心する。

クラウド化する世界(ニコラス・G・カー、村上彩訳/翔泳社)

原題は「THE BIG SWITCH」。ITによる社会構造の変化全般がテーマで、クラウドだけに話を絞っているわけではない。産業の発展モデルとして、電力とインターネットの間にうまい類似点を見いだした前半は面白いが、後半は「フラット化する社会」と重なるところ…

集落の教え100(原広司/彰国社)

世界各地の様々な住形態の事例を、100のテーマに沿って分類し、論考を加えた「空間デザイン論」の白眉。神の指令のような短いフレーズを、哲学的筆致で静かに解説していくスタイルは、さながら聖典の解読書といった趣きだ。深遠なる哲学的知性が採集した…

simplicity(edward de bono/penguin books)

ペンギンブックスから再発された、エドワード・デ・ボノの著作シリーズ。このカバーデザインが秀逸で、全巻揃えたくなるような「引き」がある。 発想法といえば日本ではいまだに「思考の整理学」をタネ本にした、お手軽でテクニカルなガイドブックみたいなも…

ユダヤ人大富豪の教え(本田健/だいわ文庫)

ビジネス版「アルケミスト」と思って読めば、多少の眉唾っぽさは許してしまえる。純真ではあるが、常識的な判断力は失わない主人公(著者)の人物造形が、オカルト化をうまく防いでいる。セミナー商法の方法論を徹底研究の末書きました、といった匂いは感じ…

ジョージ・ブッシュが日本を救った(高山正之/新潮社)

「はじめに」の耄碌ぶりに一抹の不安を覚えるが、本編以降はその不安も見事に吹き飛ぶ。諧謔精神に富んだ痛快な筆致。知的な毒。ばかりでなく深い余韻を残す感動的なコラムも差し挟む。まさに匠の技。いまや絶滅危惧種ではあるが。