2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

封印作品の謎 (安藤健二/だいわ文庫)

産経新聞を退社し、フリーとなった著者が初めて手掛けた書籍。内容の俗っぽさとは裏腹に、考え得るほぼ全ての関係者に当たった丹念な取材姿勢に好感が持てる。迷いや恐れなど、内面を率直に吐露しつつ、対象から逃げずに真実を追究しようとする初々しいスピ…

沖縄幻想 (奥野修司/洋泉社)

沖縄社会の現実を知るには格好の入門書。ただし、沖縄にリゾートイメージしか抱いていないような人向け。多少なりとも実情を知っている人には、それほど目新しいトピックはないだろう。本土からの移住組が、地域との交流を拒否し軋轢を生んでいる様に、いわ…

ウェブはバカと暇人のもの (中川淳一郎/光文社文庫)

いちいち、ごもっとも。だがもしかすると、タイトルに(日本では)というフレーズを加えた方がいいかも知れない。国際的なウェブ社会は基本的に英語ベースである。日本語という特殊な言語障壁に守られた我が国のウェブ社会は、実社会同様、世界的に見たらタ…

コインロッカー・ベイビーズ<下>(村上龍/講談社文庫)

村上龍をきちんと体験してこなかったのは、大いなる失策だったかも知れない。適度な休みを入れないと具合が悪くなるほどの、強烈な読書体験。かなりの身体的ダメージを受けた。この時代の村上を「エヴァンゲリオン」の庵野秀明は確実に内包しているはずだ。…

デザインの生態学(佐々木正人、深澤直人、後藤武/東京書籍)

佐々木、深澤、後藤の各氏が1章ずつ論考部分を担当し、各章の冒頭に3人の座談会を置くという構成。建築領域をテーマにした「デザイン・ポイエーシス」編の鼎談が、様々な示唆に富み最も面白い。「すべての造形活動の終着点は建築である」というバウハウス…

コインロッカー・ベイビーズ<上>(村上龍/講談社文庫)

小説でしか表現し得ない娯楽大作。荒唐無稽、マンガ的な話でありながら、シラけさせずに読ませ切る力量には恐るべきものがある。ストーリーとは直接関係ない、壊れた人間たちの描写が圧倒的にリアル。一体この作家はどんな世界を見て生きてきたのか。10代…

スティーブ・ジョブズ 神の交渉力(竹内一正/経済界)

内容のほとんどすべてがジェフリー・S・ヤング”iCON ”(日本語版「スティーブ・ジョブズ 偶像復活」)からの引き写しである。要約本といってもいい。各章の最後にビジネスマン向けの解説パートを付け足し、参考文献に書名を挙げただけで別物になりうるのか?

芭蕉 おくのほそ道(萩原恭男校注/岩波文庫)

芭蕉といえども全ての作品が面白いわけではないのだ。教科書に載っているようなものは、やはりポップでキャッチーで、残るべくして残っている。

クラッシュ(J.G.バラード、柳下毅一郎/創元SF文庫)

「結晶世界」「狂風世界」「沈んだ世界」・・・。あり得ないような状況を設定し、その状況下における人間たちの行動を、神の視点で観察する。バラードの作品は、サディスティックな「もしもシリーズ」である。 この「クラッシュ」では、神の視点が下界に降り…

誰も知らない世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義(松岡正剛/春秋社)

500ページ近くあるが、高校生向けに書かれた講義スタイルの本なので、意外にスラスラ読める。タイトルとは裏腹に、トピック自体は教科書的でオーソドックス。そういえば、近・現代史でこんな授業を受けたなあと懐かしく思い出す。最大の特徴は日本と世界…