2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ポスト消費社会のゆくえ(辻井 喬、上野 千鶴子 /文春新書)

80年代前後のセゾングループの一連の広告表現は、今みても斬新で強烈な光を放っている。それらを生み出す原動力となったのは、要約すれば一個人・堤清二氏の趣味性であった。パトロネーゼについて考えさせられる一冊。

キミがこの本を買ったワケ(指南役/扶桑社)

普通の人の普通の行動を普通の言葉で語れること。それこそが、クリエイティブディレクターに最も必要な能力だと思う。いわば「平凡力」。この本にあるような視点を大事にすれば、その能力は確実に養われることだろう。 高尚なマーケティング本を何十冊も読み…

夢と魅惑の全体主義(井上章一/文春新書)

ここまでいい加減な本は滅多にない。論考を進めていきながら、「思いつきなので信憑性はなし」と断りを入れ、「ここから先は専門家に任せる」。読者を、いやエッセーと言う形式をナメている。

日本進化論(出井伸之/幻冬社新書)

ソニーを離れ、クオンタムリープ社なる企業を立ち上げた著者の、名刺代わりの一冊というところか。「非連続の時代」の頭脳構造のまま現代に物申しているような、深刻さのかけらもない楽天的な言説。「趣味人の経営」という言葉が頭に浮かんだ。

「中国問題」の内幕(清水美和/ちくま新書)

櫻井よしこあたりが煽動する反中的言説がいかに表層的なものかよくわかる。中国共産党と言えども決して一枚岩なわけではなく、内部の激しい権力闘争が対外政策を大きく左右するという現実。その全体構造を理解することは、悪魔主義的かつエキセントリックに…

水戦争(柴田明夫/角川SSC新書)

20世紀が「石油の時代」だとすれば、21世紀は「水の時代」になるらしい。水が戦略物資になり、日本が突然資源大国になるような日がやってきたら面白い。生命に直接関わる「水」の価格を吊り上げるようなことが倫理的に許されるのか、云々の議論が巻き起…

Zen And the Art of Motorcycle Maintenance: An Inquiry into Values (Robert M. Pirsig /Harper Perennial)

読み終えるのに4年も掛かってしまったが、読了後の余韻が今も残り続けている。あらゆる要素が凝縮された完全小説。著作を取り巻く現実の状況までもが小説的。繰り返し読むべき稀代の名作。巡りあえたことに感謝!

偽善エコロジー(武田邦彦/幻冬舎新書)

世の軽薄なエコロジーブームに冷や水を浴びせる反骨の書。だが脇が甘い。素人目に見ても疑わしい論理多数。わざと袋叩きになり、議論を長引かせ、「反エコロジー」で食っていこうという出版社の狙いか。それはともかく、一見リベラルなエコロジー運動が「利…

「石油の呪縛」と人類(ソニア・シャー/岡崎玲子・集英社新書)

人類と石油との関係性を多面的な切り口から描いた労作。とにかく訳がひどい。<例>「森林を切り開く切迫性の源は、地元民の群集だけではなかった」・・・(他多数)。高校生レベルの英文和訳にカネを払わされてはたまらない。不適格者に発注し、校正もせず…

新・都市論TOKYO (隈研吾、清野由美/集英社新書)

有名建築家とフリージャーナリストの凸凹コンビが、東京の再開発エリアを歩きながら都市と建築をテーマに談論風発する、ユニークな構成の一冊。この二人の組み合わせが絶妙で、卑近な質問を連発する清野と、たじろぎつつも誠実に答えようとする隈のやり取り…

超優良株で資産をつくる! 世界一シンプルな投資戦略―「本物の投資」こそが日本を浮上させる! (山田勉/ダイヤモンド社)

基本中の基本を丁寧に解説する本だが、サブプライム後のこのご時世に、いかにして初心者を株に走らせるかという意図が丸見えである。ハイリターンを求められなくなった今、わざわざ株に手を付ける動機が見つからないはずだが。「株式投資は愛であり、祈りで…