ブッシュの戦争(ボブ・ウッドワード・伏見威蕃訳/日本経済新聞社)

erevan2007-12-30

国家中枢にテレビカメラが入り込んだかのような臨場感に、思わず圧倒されそうになるが、ここに書いてあることは決して「事実」ではない。関係者へのインタビューや膨大な取材内容を元に創造された一つの「仮説」、もっと言えば”見てきたようなウソ”である。カポーティの「氷血」に代表されるようなノンフィクションノベルと思って読まないと、巧妙に隠された作者の意図に気がつけない。ラムズフェルド、チェイニーを徹底して好戦的に描く一方で、穏健派パウエルへの肩入れは過剰なほど。特に奇妙なのはブッシュで、まるで映画に出てくる大統領役のように、聡明でリベラル、あまりにもヒロイックな描かれ方である。