本気で作家になりたければ漱石に学べ!(渡部直己/太田出版)

erevan2007-05-21

夏目漱石の全作品を通読してみて驚くのは、一作ごとにその表現スタイルを変えていること。一般的なイメージとは違って、かなり実験的な作家だったのだ。作家志望者に向けたこの本は、漱石の多彩なテクニックから主要なものを抜粋、その奥義を詳しく解説しながら、作家として抑えるべき重要技術を丁寧に指導する。漱石研究本としても優れて面白い。「小説とは作品世界と作者の間にではなく、作品世界と読者の間にある」という指摘。「会話」「説明」「描写」がそれぞれ「等速」「加速」「減速」に対応する《物語の時間》という視点。知的興奮。