誰も知らない世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義(松岡正剛/春秋社)

erevan2009-08-01

500ページ近くあるが、高校生向けに書かれた講義スタイルの本なので、意外にスラスラ読める。タイトルとは裏腹に、トピック自体は教科書的でオーソドックス。そういえば、近・現代史でこんな授業を受けたなあと懐かしく思い出す。最大の特徴は日本と世界を同時並行的に語っていく総括的な視点で、なるほど全体像が頭に入りやすい。編集工学の面目躍如というところか。
博学な教養人のカルチャースクール然とした佇まいが、最後の最後「拒否できない日本」(関岡 英之)を引用した当たりからその限界を見せる。2ちゃんねる的なものが跋扈する今、裏政治のドロドロは学校の先生の知識など凌駕してしまっているわけで。愉楽型の学究肌の御仁が語れるのは、文献が出そろった「確定された歴史」でしかなく、現下のジャーナリスティックな領域に入り込むべきではないのである。