株のからくり(奥村宏/平凡社新書)

erevan2009-03-05

同じ話を何度も繰り返す”水増し本”だが、バブルの発生原因に異論を唱えた部分は面白い。通説である「85年のプラザ合意および日銀の金融緩和政策」に対し、すでに70年代中〜後半から「法人の安定株主工作=株式大量保有による需給の逼迫」を要因とする急激な株高が始まっていたと指摘。機関投資家を中心とした過熱気味のマーケットが存在していたところへ、さらなる投機マネーが流れ込み拍車が掛かったというのが真相で、日銀の金融緩和策は”共犯”ではあるが”主犯”ではない、というのだ。時系列に沿った詳細な説明には確かに納得できるものがあり、なぜこうした意見が世間に流通していないのか不思議なくらいだ。そもそも「定説」とは、かなりいかがわしい物ではないか。もっともらしい説明こそ疑ってみるべきである。