言霊(井沢元彦/詳伝社黄金文庫)

自衛隊のあり方や憲法改正についての言説は、今読めば極めて真っ当なのだが、この本が15年前に書かれたことを考えると、ここまで言い切っていたのは大したものだと思う。北朝鮮が拉致を認めるはるか前なのだ。時代は大きく変わった。ただ、中心テーマである「言霊理論」についてはほとんどこじつけレベル。彼が「その原因は言霊にあり」とする事例の多くは、単純な責任回避、社会的タブーに対する自主規制といったことで説明できてしまう。面白い仮説だとは思うし、軽い読みものとして楽しむ分にはいいかも知れないが。相も変わらず「日本ではこうだが世界ではこうだ」式の安直な議論。「世界」とは具体的にどの国を指すのか?国連加盟国だけで日本以外に190ヶ国もある。子供が「他の子はみんな持ってる」というのと同じ。