食肉の帝王(溝口敦/講談社+α文庫)

読み応えあり。社会の裏側では実に凄まじいことが行われている。テーマがテーマだけに、著者が細心の注意を払いつつ執筆しているのが良く分かる。淡々と事実のみを記そうとし、内容が批判に傾いてくると絶妙のバランスで持ち上げる。只ならぬ緊張感。週刊誌の連載を元にしているので、各章が食い足りない。講談社ノンフィクション賞受賞時の、立花隆のコメントが巻末に。「今その作品が世に送り出される特段の理由がないような作品が多すぎる。完成度より、雑誌掲載中に世の中に与えたインパクトを重視するべき」。すべての「賞」と呼ばれるものに当てはまる視点だ。