世界制作の方法(ネルソン・グッドマン、菅野盾樹訳/ちくま学芸文庫)

erevan2009-02-11

世界はそこに「ある」ものではなく、人間が「つくる」ものではないか。著者にとっては常識以前のこの思想が、信じていたものがすべて崩れ去っていくような今だからこそ、異様なリアリティを持って迫ってくる。世界は一つではない。我々の生とは、それぞれのオリジナルな「世界」を日々作り出し更新する作業である。60億の多様な「世界」が平行し共存するのがこの世の実相である。そう考えれば、例えば、虚構でしかない「スタンダード」に合致しない自分を思い悩む必要などまったくなくなる。どこか他の場所で、自分の常識を作り出し、そこで生きればいいだけの話だ。人間が作り出している以上、「世界」が容易に変更しうるのもまた事実。「世の中を変えようと思ったら、まず自分を変えよ」が、精神論的なスローガンではなく、極めて当たり前の事実であるという認識をこの本はもたらしてくれる。他の誰かが決めたものに依存し、それに従うことを絶対的な「善」とすら考えがちな日本人には特に必要な、”思考解体の書”。