冷血(トルーマン・カポーティ/新潮文庫)

問題作。「あくまで小説」と自分に言い聞かせながら読まないと危険。同じ素材を使って、ほかの誰かがまったく違ったストーリーを生み出すことは当然可能で、これは一つの仮説にしか過ぎない。会話の内容も心理描写も大部分は作家の想像力の産物である。犯人の心理を探求するためには、こうした無理のある手法を利用するのも致し方ないことだが。読み終わって、どうもスッキリしない。